小川温泉から朝日岳へ

原生林の中を行く

朝日岳より白馬岳を望む画像

小川温泉は、藩制時代から黒部奥山廻り役人の休泊所であった。今日では、露天風呂への高い人気から賑わいを見せているが、昔も今も白馬、朝日岳への登山口に変わりはない。温泉を出て、左右の新緑を楽しみながら舗装された道を行くと、標高881メートルの越道峠に至る。ここは小川と黒部川の分水嶺である。

越道峠から北又谷までは緩い勾配の下り坂で、歩いて40分ほどである。標高700メートルの北又小屋は、登山及び周辺散策の拠点として北又ダムの建設に伴って改築され、最近では、岩魚や山菜料理が食べられるとあって、登山者以外の利用客も訪れるようになったと聞く。

さて、いよいよ登山道だ。まずは北又川にかかる吊橋。ダムの放水を見ながら渡る。往時の板渡しの揺れる橋から堅牢なものになり、水面からの14メートルもそう高さを感じさせない。

1合目、2合目休憩地は大きなブナの下である。いずれも北又園地広場が見え、谷から吹きあげる風が快い。ブナ林は春と夏が同時に始まり、樹上から高い蝉の声、樹下の茂みから低いヒキガエルの声が木々の間に響いている。

ところで、白いブナの幹に、天保六年忠○○、明治七年△△など多くの文字が刻まれている。ここは古くから道として使われていたのだろうか。記録には、昭和3年に 大蓮華山保勝会 (おおれんげざんほしょうかい)が朝日岳へのルートとして開拓したとあるのみである。

流れ落ちる汗を噴きながら4合目を過ぎると、まもなくブナ平である。巨大なブナの木がうっそうと生い茂っている。まさしくブナの原生林だ。5合目を過ぎると、木の根が張り出した急な道になる。7合目。標識には白樺坂とあるが、付近の白い木はダケカンバである。樹林の下にはウラジロヨウラクの赤紫の小鈴状花がきつい登りを慰めてくれる。8合目からは、ふくいくたる香りを漂わせるオオシラビソの樹林が続く。小沢を4つ5つ通過するとイブリ山頂に出る。

夕日が原の画像

北又谷から登り始めて4時間半、ようやく朝日岳の姿をみる。イブリ山から若干下り、馬の背の岩場を過ぎると夕日ヶ原に出る。例年よりは少ないとはいえ、草原は残雪に覆われ大雪原と化している。雪渓の水で喉を潤し、前朝日岳の巻道に入る。ここは緩い登りだが、疲れた体には辛い。

登り切ったところで朝日平に出る。合掌造りの赤い三角屋根の朝日小屋が、草原の高山植物の中に静かに立っていて、その向こうには大きな山頂が屏風のように広がっている。暑い登りの1日もこれで終わる。小屋でしばらく休むと、真っ赤な夕日が運海に沈み始める。1番星がきらめいている。今夜は満天の星が望めそうだ。

翌早朝、山頂を目指す。頂上へは1時間も要しない。汗もかかないうちにゆったりと広い頂上に着く。眺望は一気に広がり、黒部・立山の俊峰、白馬岳、雪倉岳の大きな山容が眼前に迫る。また、信州・越後の山々が雲海の上に林立している。朝の頂上は風が強い。薄片の雲が、幾筋も頭上を飛ばされていった。

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